COLLODION PROCESS WORKSHOP

簡単な写真の歴史


湿板写真の説明の前に簡単に「写真」の歴史について

「ある物質に、光の作用で感光させてイメージを定着させる技法」を「写真」とするならば、

その最初の成功は1820年代、フランスのニセフォールニエプスによって成された、

アスファルトの感光性を利用した「ヘリオグラフィー」です。


ニエプスによる『Un cheval et son conducteur』(馬引く男)、1825年ごろに版画を撮影したものとされる

そのニエプスと共同研究者であったダゲールは、1839年銀板写真法を発明します

「ダゲレオタイプ」と呼ばれるこの方法は、世界初の「実用的写真技法」とされています。

ダゲレオタイプは銀板にヨウ素の蒸気をあて感光性を与えて原板とし、カメラで撮影の後、

水銀蒸気で現像するもので、繊細で美しい左右反転画像、

銀板上にダイレクトにポジティブ画像を得るという特徴から一点物の写真という特徴を持ちます。


ダゲールによる写真『Boulevard du Temple』。1838年から1839年の間に撮影されたもの。10分以上の露光により道路を行きかう人馬は全く写っていないが、唯一画面左下に片足の靴を何かに乗せた人物が写っている。おそらく初めて写真に写った人物と思われる

 

ヘリオグラフィーからダゲレオタイプへと写真技法が発展していく中でもう一つの重要な写真技法があります

それはイギリスのタルボットが考案した「カロタイプ」という技法です、

これは世界初の「ネガ–ポジ法」であり、複製が可能という点で写真史上に残る画期的な写真技法と言えます。


カロタイプ(タルボット撮影、1842年または1843年頃)

 

1851年にはイギリス人フレデリックスコットアーチャー(ほぼ同時期にギュスターヴルグレイ)によって

「コロジオンプロセス」「湿板写真」が発明されました。ヨウ化コロジオンをひいたガラス板を硝酸銀溶液に浸し原板とし、

湿っているうちに撮影、現像を行う。コロジオンプロセスは、

ダゲレオタイプのような諧調豊かな画像が得られる事とガラス原板から紙焼きを行える(つまりネガーポジ法であること)という特徴を持ちます。


Frederick Scott Archer – by Robert Cade c. 1855

Self-portrait of Gustave Le Gray (late 1850s)

 

その後1871年イギリスのマドックスによって「写真乾板」が発明されました、

これが現在の写真フィルムの元になっているものです、

湿板写真では原板が湿っている状態で撮影、現像しなければならないのに対して、

この技法では撮影者がいつでも撮影でき、持ち帰って現像することができるため、

写真乾板の工業製品化とも相まって、短期間で湿板を駆逐しました。

 

乾板写真は当初、ガラスを支持体としていましたが、

割れやすく取り扱い辛いガラスの代わりにセルロイドを使うことが考えられました。

1889年にはアメリカのイーストマンがセルロイドの柔らかさを生かして、ロールフィルムを発売しました。

1935年にはコダクロームが誕生し写真は像だけでなく色までも再現できるようになりました

1975年にはイーストマンコダックの開発担当者スティーブサッソンによってデジタルカメラが発明されました

1999年に携帯電話付きのカメラが誕生し、

2000年頃からは各メーカーがデジタルカメラ事業に参入し現在に至ります。